本を出版して感じたことがあったので、ちょっと簡単に書いてみた。
「西洋甲冑入門」の出版をすると「次は中級の本希望」を何度か言われて「?」に思ったんでございます。まずはじめに基本の基本ともなる入口の概念となる「入門書」を作ったわけです。
この「入門書」は基礎を持たない素人を基本としているので、知識を持たない人に導きの明かりを灯す。そして入口で概念が分かったところからそれに沿って知識を重ねて勉強や理解が始まる。いきなり勉強しようとしてネットを徘徊してまごついたり、挫折するのはこの「基礎の入門」がないために起こるわけでさ。
「入門」は学研の図鑑や、小学校の歴史教科書のようなもの。これを理解してから『西洋甲冑の知識』として「初級」「中級」「上級」そして「学者級」と順番に学ぶことで深い緻密な知識や理解が得られるわけですね。学校の勉強と同じで、小学校1年生から算数を学んで、中学高校大学と数学に進むのと同じだよね。
というわけで「入門」を理解してから次に「初級」を勉強するんだけど、前述のようになぜか「中級」へ飛ぼうとすることが多い。入門と初級は別世界なので一緒にするといきなりゲームオーバー。世界基準で言えば私なんぞ初級で、これから中級を目指している鼻クソ青二才なので、いきなり中級に飛ぶってすげーな!と思ってしまうのでございます。
別に知識にランク付けがあるわけではないので、初級や中級が何を指すか定まってないけど、西洋甲冑の知識を集めていると、到底理解できないハイレベルな話や説明が出てきて「これは上の世界だ」と思い知らされる。全体が見えることで自分が何を学んでいるかの度合いが見え、だからこそ上と下の知識の差もわかってくる。この理解があると、いきなり上を目指すのではなく、下から上がっていかないとダメだこりゃと気づく。
なんか分かりにくいけど、私なりにざっくりとイメージを書いてみるよ。
●入門
基本的な歴史の流れや国や地域の区別や理解、西洋甲冑の単純な違いなどの基礎原則を理解すること。これを理解していないと表面的な形やゲームとしての雑多な興味で終わってしまう。学研の図鑑や小学校の教科書程度の理解と表現できるかな。ここが定まっていないと先の説明ができない。
●初級
甲冑の時代識別や国の区別、用途の区別は当然として、部品の名前や構造の基本的な概念をおおまかに理解している。パーフェクトでなくても図やイラストの説明を聞いて概要が理解できる。初級も情報が増える基礎が理解できるのでスラスラと情報が手に入る一番楽しい時。基礎専門用語で会話ができるようになったら初級もおしまい。
●中級
具体的な西洋甲冑の構造や分類を理解し、歴史資料を元に緻密な再現や議論ができるようになる。中級もレベルが上がると人名や地名、博物館の展示物で例を挙げ、詳細で具体的な会話や討論ができる。学ぶことは複雑で難解になってくるが、探求としてとても楽しい段階。西洋甲冑マニアと呼ばれる人々はこれが最低レベルで、上級者の知識を吸収して育つ。
●上級
論文や学者の意見を元に学術的研究を行い、実物の資料や精密な再現に特化して資料を集め自己理論を展開する。世界中の博物館の展示物や、写本挿絵をくまなく確認し、資料を集めて統計的に分析研究を行う。大半は資料集めと分析で地味。一般ではセミプロと呼ばれ、学者ではないが出版活動やサークル代表を務めることもある。
●学者
ここまでくると一般人には関係ないが、世界で活躍する数少ない西洋甲冑や武器の専門学者たち。博士号を持ち、論文発表や学術調査権限を持ち、あらゆる貴重な資料を観察し学術研究に勤しむ。高度な分析マシンを使い、数式や物理計算、化学の話ばかりで一般人が理解するのは難しい。これらの情報が上級者や中級者に広がり、その分野の質を向上させる。
と勝手なことを思ってみたけど、だからこそ上を目指して基本的なことから学ぼうとしているわけでございます。入門や基礎を無視していきなり上の知識を求める人は多いんだけど、基礎を学ばずして成長はないでござる。しかし一律の教科書がないだけに順番に学ぶのは難しいよね。
しかし「基礎を学んでくださいね」と何百回言ってもそれを守る人は本当に少ない。反逆者かと思うほど逆らってくる人が多い。だからいつまでたっても西洋甲冑の知識が得られないんだよ、と思ってしまうのね。20年間の経験でそう思っているのだから、騙されたと思ってマジで入門から初級へ丁寧に基礎を学んでミソ。マジで。
といったところでこの話はおしまい。「西洋甲冑入門」は一度読んで終わりではなく、他の資料を見たり読んだりするたびに確認できる「物差し」として繰り返し見て欲しいもの。何度も何度も繰り返して見るうちに、それが当たり前の基礎となってその後の資料探しや確認が「デタラメ知識に振り回されずに」楽しめるでございます。
長くなってしまったけど、以上でおしましです。
最後まで読んでくれた人ありがとうございます。
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