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ドイツ剣術を学ぶこと 中編

 さてドイツ剣術を学ぶこと、のつづきですね。

 せっかくなので、見学してきたオーストリアの剣術グループの運営理念やシステムについてちょっと触れてみたいと思いますね。話を聞いてとても感激したので、研究グループの参考にしたいなと思いました。当時聞いたことと覚えている範囲で、ちょっと長いけど簡単に書いてみますね。
(・ω・)ノ


◆「学問の研究として剣術をおこなう」

 日本ではあまりないスタイルなのかな。団体は、伝統武術道場でもないし、ビジネススクールでもないし、健康サークルでもないし、趣味サークルでもない。マニアックな歴史研究団体みたいな感じだと思う。国に団体登録してあるので、国際活動では補助金とかも出るよ。もちろんすべての人が学者肌ではないけど、歴史や学問を学びたいとする人ばかりでした。

 この理念が基本としてグループが設立されているので、運営自体が歴史研究に傾倒しているってこと。国際交流の試合も少し出るようだけど、勝敗を気にしてないからとくに試合練習はしてなく、試合に勝つことはほとんどないとか。重要なのは、昔の武術書に書かれていたことの分析や研究だから、試合はおまけみたいですね。

 おもに練習しているのがドイツ剣術のロングソードだけど、メンバーによって興味が異なるので、個人的にはメッサーやレスリング、イタリア剣術を調べている人、外部講師を招いてソード&バックラーなど、それらは交流情報としてお互いに説明しあっていたので感心した。つまりそれぞれみんなが先生になっているのね。

◆「最初は剣術メニューを1年かけて学ぶ」

 これについては現在2年になっているようですのう。剣術グループに入ってもすぐに正式メンバーになれるのではなくて、2年をかけて基本メニューを学ぶそうだ。そうしないと軽い気持ちでやって来て、すぐやめちゃう人が多いので、やる気があるか、素質があるか、気力と体力を試され「2年で基礎を学べ」ってことなんでしょうね。毎週のように2年も習って、それでずっと訓練生なんだから厳しいよね。

 個人的な考えだけど、日本では習いものを長く続けるのはちょっと難しい。仕事の事情や健康の事情、金銭的な事情も含めて、同じことを長く続けるのは難しい。おそらく、日本で2年の基礎を学んでから入会できるとなったら、まずメンバーになるのは厳しいかなと思う。でも中途半端に首を突っ込まれても迷惑だから、三浦さんの3年間の話ではないが、やっぱり最低限びっちり1〜2年はしっかり続けてほしいなと思う。自分も何度も経験してるけど「西洋甲冑勉強したい」「ドイツ剣術を習って剣士になる」と言った人とは何人も会っているけど、威勢のいい人ほどみんなすぐに止めちゃうから、本気で学ぶことのハードルは高いなと思う。

◆「2年の基本メニューを終了して続けるか選択」

 2年間で一通り基礎を学んだら、そこではじめて正式にグループに入って、メンバーたちと共に剣術を続けるかどうか尋ねられる。やっとここでスタートラインなんだよねびっくり。練習生で2年間続けられる人はどれほどなんでしょうか。ざっと聞くと、半分以上はここに到達できないで脱落するそうな。これは生徒を増やして集金を目的としているわけではないので、遊び半分の質の悪い人がゾロゾロ集まっても運営が困るとのこと。知識も体力も姿勢も本気でないとみんなの迷惑になるから、初めに強く試されるんでしょうね。

 仕事や健康の事情も考えると、思った以上に厳しい。もちろん正式メンバーに登録しても、その後の更新をしないとメンバー登録から外されちゃう(幽霊禁止)から、本気で続けるにはかなりの覚悟が必要なわけだ。いちおう年会費はあるので、メンバーの皆さんが一生懸命、そして楽しそうにやっているのもその覚悟があるからだと思ったよ。

◆「メンバーに審査される」

 2年間の基礎を学んだら「引き続き剣術を学び続けたい」と選択して希望を申すわけですな。しかしメンバーに入りたいと申したからとて、無条件に入れてもらえるわけではないから恐ろしい。グループのなかで入団を審議され「この練習生をメンバーに入れてもいいですか?」と皆に問う。このとき、2名以上の拒否者が出るとグループに入れてもらえないルール!

 もちろんこれまでそのように拒否された人はいないそうだけど、その練習期間の間に素行が悪かったり、頭が悪すぎたり、運動神経が皆無だったり、メンバーと摩擦があったりすると、グループメンバーになれず拒否されちゃう。だから2年間練習メニューを学ぶ期間は、人間性も試されるわけですな。「お金を払えば誰でも良い」「サークルだから誰でも良い」ではないのが恐ろしくもすごいと思った。でもまともな学術サークル活動をするには、やはり最低限の審査は必要だと思うよ。

◆「知識と情報は原則として共有される」

 この剣術グループは、武術スクールや伝統武術とは異なる大きな点だなと思う。どこかに記述されていたこと、新しい情報を入手したとき、新しい発見があったとき、自分の持論ができたとき、そんなときは基本的に知識と情報はグループ内で公開され、共有されるのが原則とのこと。「新しい〇〇の情報を見つけました」「〇〇で新しい解釈が発表されていました」など、集まりで同じ情報を共有していた。練習見学のときでもこのやり取りが何度かあり、知識と理解がメンバー内で共有され、解釈がバラバラにならないようになってた。秘密主義とか、先に知ったから偉いとか、そういったものはない。みんな一緒で知識共有財産。

 新しい解釈や動きを紹介すると、「この新しい解釈をグループで受入れますか?」と挙手を取るなどして、全体の了解を得る。みんなが納得すれば新しい解釈(動き)に切り替えるし、新しい知識として理解する。だから「以前の解釈では」と入った基準ができる。理解の割合が少なかったり、強い反論がある場合は「ではうちのグループでは参考ていどの解釈とします」のように、グループ内で知識と情報が公開、共有される。これはベテランだろうが新人だろうが関係ない。「剣術として客観的合理性があるか?」が常に問われており、歴史の認識と解釈に対して、信憑性や信頼性を常に大切にしていた。

◆「序列がない」

 グループの話を聞いて感心したことは、前のグループ意見交換でも見られるように、研究団体なので序列がないのはびっくり。もちろんグループを登録するので代表は必要だけど、それは書類上の設立者と代表者であって、ボスや師範ではないのだ。職業、年齢、人種、男女、経験年数、そんなものは関係なく、基本はすべて平等。知っている人が知っていて、できる人ができる。上手い下手、強い弱いもすべて関係ない。信頼できる人、知っている人、それぞれがそれぞれなだけ。だからベテランさんがとにかく丁寧。年齢や経験値が異なるのは仕方のないこととして、それは誰でもだいたい同じこと。できないことは素人として接しているので、このへんの序列がいっさいないのはすごいなと思った。だからどれほどベテランでも、知らないことは素人として話を聞いて質問している。または教わっている。

 ちなみに古株のベテランさんたちはエリート職業な人ばかりでした。皆さん非常にハイレベルですごいなと感心してしまう。それと同時に、皆さんとても丁寧で謙虚で、そしてユーモラスがあって常に面白いことを言って会話と説明を明るく引きつけて、すごいな〜と感心しながら憧れますた。

◆「気軽に試合をしない」

 世界中で存在する剣術グループだけど、それらの各々のグループは国や代表者によって運営方向が異なるのね。学問を中心とするグループもあれば、試合の勝敗にこだわるグループもあり、その中間的なグループもあり、それぞれの団体ごとで運営理念はまちまちだ。

 この三つの違いは顕著にあって、見学したグループは主に研究だから、試合の勝敗や強さほとんど考えてない。試合に特化したグループは恐ろしいほど好戦的で、ある意味実用的だなと思うけど、強さを求めすぎるとミックス剣術になるから「それは古流剣術なの?」と思うことはある。多くのグループは昔の記録を手本に試合をするから、大半は試合に傾倒するみたいだね。これだと歴史研究よりはスポーツ傾向になるんだろうなと思う。

 見学した団体では、新しく入った練習生(1〜2年生)にはスパーリング練習をさせてない。これは主に研究を目的とした団体だからでもあるけど、基本としては、練習生の間はひたすら基礎を学ぶのが目的なので試合などさせない。ビギナーは体の動きや力加減がわからないので、試合スパーリングは危険だという判断ですね。これはとてもよいことだと思った。

 練習生が基礎練習を始めても、初めは力加減がわからないので、ときどきケガをするそうな。素人は意外なことをするので危険なのだが正にそれ。容赦ない一撃で剣が折れたり、マスクが壊れたり、アザを作ったり流血したりと、とにかく危険や加減を知らないのでビギナーは怖い(無謀)。学問を学ぶなかでケガはあってはならないので、練習生にスパーリングをさせないというのはとても良い考えだと思う。少なくても自分も、ドイツ剣術を始めて1年(練習100時間)未満の人はスパーリングしてはいけないだろうと思ってる。


 とまぁ、様々なシステムを見て聞いて、なるほどなと感心したことがたくさんでしたね。今でも自分のなかでこれがひとつの基準になってる。細かいことは詳細に確認していないけど、当時はこんな感じで説明してもらったのを覚えてる。現在は少しルールが変わっているかもしれないけど、グループ自体は2000年頃からやっているので、本質は変わっていないと思う。様々なところを参考に見習いたいなと思った。まとまりないけどとりあえず以上ですね。

 長いので、ひとまず区切ります。





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.10 2015 ドイツ剣術 comment0 trackback0

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