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アメリカ:ヒギンズ・アーマリー博物館へ その8

それではこれで最後にしましょうね。

下の甲冑も説明が無かったので詳細は分からないです。あまり見たことが無い形なので良く分からないですが、細かく見ていくといろんなことが分かります。こうして分析しようとすると、多くの情報が必要になるんだけど、このときに写真がきちんと撮影されていないとアウトになっちゃうのです。

たとえば、全身写真が無い、3面写真が無い、パーツごとの拡大写真が無い、各部の接写した写真が無い、ピントが合ってない、といったように、分析するときには総合的に見なくてはいけないので、スナップ写真1枚とか、写真からコピーした紙1枚とかではまず簡単に分析ができないのです。

なぜなら西洋甲冑の多くは合成になっている可能性がとても高いし、細部を見ないと意外と分析できないので、見えるところだけで判断するとえらくとんでもない勘違いになっちゃうから、細かく見るにはパーツごとに詳しく見ないといけないのだ。この甲冑だって、いつの時代でどこの産地か調べようとしても、画像が少ないからそこから得られる情報が非常に少なくて、あれこれ調べているだけでマル1日ほど時間が取られてしまう。

つまり画像で情報が多ければ、推測や確認にそれほど時間を取られない訳で、だからこそ資料収集としての写真撮影は非常に厳格で機械的に行わないといけないのですね。かっこいいからと、斜めや上半身ばかり撮っていては、そこからほとんど情報が得られないのでございます。

IMG_0708.jpg

この鎧は良く分からないけど、たぶん装飾技術としては15世紀中期にかけてのものだと思う。製造技術はドイツ風のしっかりしたゴツい良い造りだけど、装飾を見るとかなり北イタリアの模様や装飾が入っているのね。だけど甲冑のデザインと形は、スペイン甲冑の特徴だなと思うところ。

悩ましい点は、造った人が南ドイツ人なのか、デザインは北イタリアを採用したのか、発注者がスペイン人かもしれないので、こういったものは一概に決められないのが難しいところなのだ。種をたどるか畑をたどるか。エラい人は自分の好みもあるだろうし、流行を追っかけたかもしれないし、かっこいい外国甲冑の真似をしたかもしれないので、見慣れない個性的な甲冑は、記録が無い以上、分析がとても難しいのでござるよ。

本来なら、刻印が打ってあることを探し出し、産地を特定するのが良いんだけど、こうしてぽつんと置かれているだけだとどうしようもないのです。ただ言えることは、けっこういい造りになっていること。エッチングも入っているし、造りもとても良いので、そこそこの優良トーナメント用の甲冑です。

ちなみにスペインは現在の国とは異なり、当時15世紀中期は神聖ローマ帝国(オーストリア)の同国領地だったから、政治も文化もかなり神聖ローマ帝国と共通していたんだよね。当然甲冑武器も同じルートで供給されていただろうし、甲冑職人だって両方を行き来していたはず。だからこそスペインとドイツ(オーストリア)の甲冑はとても似ているのだね。

IMG_0736.jpg

しかしこうして良く見てもらえば説明しなくても分かるように、「西洋甲冑は造りが汚い」とか思っている人は、いったいどの目玉と口でそれを言っているのだろうと思ってしまうのだ。ちょっと昔までは修理されていないまま展示されているのもあったけど、現代ではほとんどがこうした修復済のものが多い。古いもので錆びて壊れているのもあるけど、それは錆びて壊れているのであって、造りが雑なのとは話が別なのじゃ。

なぜか日本では、西洋甲冑の造りが汚くて雑だとイメージが定着してしまったけど、それは未修繕の甲冑か、3流4流の甲冑しか見ていないからだと思う。この甲冑のように立派なトーナメント甲冑など見たら、その認識が大きな誤りだと気がつくでしょう。

しかもこれが全てパーツごと1枚の分厚い鋼板の鍛造でできているし、溶接や鍛接と言った小細工もしていないし、現代のようなモーターツールさえ使っていないで、手作りなのに一つ一つでも大量生産されていた。日本のように小札や漆や布なども使わないで、すべて鋼でできているから、馬の上でお互いが槍でどつき合って落馬しても、甲冑は壊れないしケガもしない。歴史上長い年月をかけ、戦場スポーツと実用に進化し続けた形と機能は、お見事の一言につきますですよ。

だから武器でも西洋甲冑でも日本甲冑でも、とにかく現物をたくさん見ることがいかに大切なことか、そして情報を揃えることがいかに大事か、と言うようなまとめと感想にて、このヒギンズ博物館の旅行記をおしまいにいたしま〜す。
最後まで読んでくれた人はありがとね。
☆^∇゜)





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.28 2012 海外旅行記 comment0 trackback0

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